訪問介護先が近場であれば、小回りの利く自転車を移動手段にしているホームヘルパーが多いです。
夏は直射日光による熱中症や日焼け、台風などの暴風雨、冬は積雪により移動が困難になるなど、さまざまな対策が求められるのが、ホームヘルパーの自転車移動なのです。
移動時間中は、基本的に手当がつかない、あっても数百円程度ですから、なるべく余計な体力を使ったり、失敗を避けたいところですよね。
ここでは、真夏の暑さ対策や暴風雨、真冬の雪道それぞれの移動にかかわる問題点とその対策や、自転車の保険加入や駐車に関するお話などをまとめました。ご参考になれば幸いです。
真夏の暑さ対策
頭・首回りで身体を冷やす対策をする
頭部の対策は、どんな髪型であっても被りやすい「サンバイザー」の着用がベストですが、デザインに抵抗がある、あるいは風が強いと飛ばされてしまうデメリットがあります。
「サンバイザー」がどうしてもイヤな方は、クリップやチェーンなどのアゴ紐がついた帽子なら、風で運転中に飛ばされてしまうリスクを軽減できます。
自転車でいちばん怖いのは日焼けですから
とにかく帽子本体にUV対策されてることが第一条件です。また自転車に乗った際の多少の風にもへこたれない通気性の良さも必要ですよね。
確かに、女性にとって日焼けは怖いですよね。
身体全体に日焼け止めクリームは、忘れずに塗っておきましょう。
首回りに巻くタオルは、汗を吸収するために必須となりますが、体温を下げるために「クールタオル」「冷却スカーフ」などの利用や、「保冷剤」を一緒に巻いておくことも効果的です。
上半身は、UVカット機能がある上着を着用して、ウデの日焼け防止にはアームカバーで対応しましょう。
水分補給の方法
夏場で怖いのが熱中症なので、水分の補給は必須です。
水分補給は、発汗により不足する塩分やミネラルなどの成分を補充するためにも、水やお茶ではなく、ポカリなどのスポーツドリンクが良いとされています。
(自転車移動中にこまめに摂取するのはもちろん、塩アメをいくつか持っていれば、塩分不足にも対応しやすいですね)
水分補給のドリンクは、持参する場合は冷凍ドリンクがあると、道中も冷えた状態で飲めるので、おすすめです。
移動中に体力が削がれて、訪問先でチカラ尽きてしまっては本末転倒なので、道中で立ち寄れるドラッグストアやスーパーなどを事前にチェックしておけば、空調が効いていて一息つけるので安心ですよ。
(ただ、涼むためだけの来店は道義に反すると思うので、普段から買い物で利用しているお店にした方が良いでしょう)
また、暑さで体力が低下してくると、いつも以上に移動に時間がかかってしまうので、なるべく事務所や外出先で体力を回復させるだけの時間的な余裕を多めにとることも大切です。
真冬の積雪対策
防寒対策と汗冷え対策
防寒対策は、地域の積雪量や体温の個人差によって内容が変わりますが、最低限ニットの帽子やダウンなどコート着用、首にはマフラー、手袋、そして、もっとも大切なのが足元です。
足が冷えると体温も下がりますから、靴下の2枚重ねやブーツの着用は、冬の訪問介護移動に必須の防寒対策といえます。
汗冷え対策としては、汗量によっては首にタオルを巻いて、道中の移動で身体を冷やさないよう配慮が必要になるでしょう。
前述の靴下は、雪や訪問先などで濡れてしまうと、やはり体温低下の原因となりますので、替えを持参した方が安心です。
難しいのが、訪問先で業務を行うときの服装です。
訪問先のご利用者によって、あるいは訪問時間によっても、室温の差が大きいため、事前にケアマネージャー(※以下、ケアマネ)やサービス提供責任者(※以下、サ責)から情報をヒアリングしておきたいところです。
制服の下にユニクロなどで販売しているヒートテックなどを着たり、ズボンの下にスパッツやストッキングを履いたりしても良いですね。
真冬の自転車事故の対策
雪道や凍結道路は、自転車には乗らないのがもっとも安全ですが、すべての訪問先にバスや電車などの公共機関で向かうことが難しい方もいるかと思います。
しかし、事業所が貸し出す自転車なら、タイヤチェーンを装着するなどの対策がなされるかもしれませんが、自分の自転車に自費で対策をするとなると、費用対効果の面でもやるべきではありません。
雪道走行可能な自転車について調べてみると、「電動付自転車」や、通常の約5倍タイヤの横幅が広い「ファットバイク」、タイヤに履かせる「スノータイヤ」など、安定感の高い特徴がありますが、数十万円するものもありますし、お仕事のために自費で購入するのは現実的ではありません。
また、自転車好きな方の中には、自動車用の「タイヤチェーンの滑り止めスプレー」を使ったり、結束バンドを等間隔でタイヤに巻いて走ったりと、独自に対策する方もいるようですが、自己流の対策はリスクが大きすぎますし、結束バンドを巻いたタイヤで走っているところを警察に見られたら間違いなく止められるでしょう。
こうなればもはや、問題は費用面だけではなくなってきます。
北海道などの積雪量の多い事業所のお話をヒアリングすると、暴風のヒドい日や冬季期間は車やバスなどを利用するルールになっています。
出勤時は運転ができていても、途中で積もってしまうこともありますが、無理せず手で自転車を押して移動しましょう。
暴風雨対策
雨の日の訪問は、カッパ(※以下、レインコート)だと訪問先で毎回着たり脱いだりが面倒に感じますが、カサをさしながら自転車に乗るのは接触事故のリスクがあるためとても危険です。
暴風日は、雪の日と同様に、移動に時間がかかってしまうので、早めに行動することが大切です。
防水透湿性能の高いレインコートを選びましょう
レインコートの役割は、水をはじく防水性能とともに大切なのが、体温が上がって発する蒸気を体外へ排出できる、通気性です。
通気性に優れたレインコートを着用すれば、自転車をこいでも身体がムレずらくなります。
市販されているレインコートには、防水機能を表す耐水圧という数値があります。
耐水圧とは、雨が染みこむのを防ぐことができる雨量を示す数値です。
- 300mm・・・小雨に耐えられる
- 2,000mm・・・中雨に耐えられる
- 10,000mm・・・大雨に耐えられる
- 20,000mm・・・嵐に耐えられる
耐水圧の数値が高いほど防水機能が優れているわけですが、自転車をこぐので通気性も気になるところですよね。
通気性に関しては、透湿(とうしつ)度の数値に注目します。
透湿度とは、生地1㎡あたり24時間で何gの水分が透過したかを示す単位(g/㎡・24hrs)です。
透湿度の高い素材を使ったレインコートは、汗をかいても蒸れにくい特徴があります。
- 大人の安静時で1時間あたり:約50g(24時間で約1,200g)
- 軽い運動で1時間あたり:約500g(24時間で約12,000g)
- ランニングなどの激しい運動で1時間あたり:約1,000g(24時間で約24,000g)
人間が汗をかく量の目安が上記に示されていますが、訪問介護の移動中の運動量であれば、中間の「24時間で約12,000g」と考えておけば良さそうですね。
そこから考えると、透湿度の目安は、10,000g/㎡・24hrs以上(※24時間で約10,000g)がオススメです。
他にも、タオルの持参やグローブ、レインシューズといった準備から、カバンをぬらさないよう袋に入れて持ち出すなどの工夫が必要になってきます。
レインコートを選ぶときは、赤やピンクなどなるべく目立つ色を着用した方が、事故の防止につながるのでオススメです。
いつも以上に安全確認を
強い暴風日には、普段以上に移動に時間がかかるため、ゆっくりと焦らず安心して行けるよう早めの行動を心がけることが大切です。
焦って事故などを起こしてしまったら、事業所やご利用者へ多大なご迷惑をかけてしまいます。
コンタクトを普段使っている方は、強風で目にゴミが入りやすいため、メガネの方が無難です。
交通量の多い道路の走行はなるべく避けて、細道を選んで通行しましょう。
訪問先に到着したら、駐車スペースの周りを確認して、風で転倒しないよう場所や停め方に配慮が必要です。
電動自転車は購入すべきかどうか
電動自転車は、文字通り電気の力を利用して少ない労力で自転車をこぐことができます。
電動自転車を訪問介護で利用するメリットデメリットを、以下にまとめました。
電動自転車のメリット
- 小さなお子さんのいる家庭ならプライベートでも役立つ
- 坂道の移動が劇的に楽になる
- 長距離移動が楽になる
- 体力の消耗が少ないため、スムーズにヘルパー業務が行いやすい
電動自転車のデメリット
- 重いので転倒時などが大変
- 人口密集度の高い都市部などは、降りて歩くことが多いため、重い荷物となる
- 道中バッテリーが切れると、重たい荷物となる
- 慣れるまで時間がかかる
- 高価格である
筆者の見解としては、都市部で勤務する方や、坂道移動などの問題がない方は、高いお金を出してまで購入する必要性はないと考えます。
自転車の保険加入について
ホームヘルパーのほとんどの方が、自分で購入された自転車を使っていると思います。
業務中の事故に関しては、働く事業所が不慮の事故やケガに対する補償をどのように対応していくのか、面接の場などではっきり確認しておくことが大切です。
しかし、登録ヘルパーなどはとくに、就業時間とプライベートの時間が混在する特性上、筆者としては個人で保険に入っておくことはとても重要だと考えています。
自分の自転車で移動をするホームヘルパーは、購入したお店で「TSマーク付帯保険」に加入したかどうかを確認してください。
自転車安全整備店検索URL:http://www.tmt.or.jp/safety/index1.html
「TS付帯保険」は、(公)日本交通管理技術協会に加盟しているサイクリングショップであれば、自転車購入時に加入するかどうか聞かれるハズです。
一部の地域では、自治体のルールにより強制加入のところもありますが、任意加入のところもあります。
「TS付帯保険」には、第一種TSマーク(青色)と第二種TSマーク(赤色)の2種類で構成されており、両者の補償内容はそれぞれ以下のようになります。
賠償責任補償 | 傷害補償 | 被害者見舞金 | ||
---|---|---|---|---|
死亡若しくは重度後遺障害 (1~7級) | 死亡若しくは重度後遺障害 (1~4級) | 入院 (15日以上) |
||
第一種TSマーク (青色マーク) | 1,000万円 | 30万円 | 1万円 | なし |
第二種TSマーク (赤色マーク) | 1億円 | 100万円 | 10万円 | 10万円 |
加入期間は1年間ですが、青色マーク、赤色マークそれぞれにかかる保険料は、お店によって変わるため、ご自身で確認が必要になります。
自転車を停めるスペースについて
訪問先で自転車をおいておく場所に関しては、車よりは神経を使う必要はありませんが、大前提として、事前の打ち合わせで決まった場所に停めるべきです。
しかし、天候やご利用者のご家族の意向などによって、以下の問題が発生することも頭の片隅に入れておきましょう。
- 強風の日は、近くに乗用車がないか、倒れてキズつけることはないかを確認する
- 事業所名の書かれた自転車をご自宅近くに停められると嫌がるケースも
- 予定と違う場所に停める場合、違法駐車で回収されないよう事業所名や停めておく時間や、(事業所の)連絡先を分かるようにしておく
- 電動自転車はとくに、盗難防止に注力する
自転車は、子どものころから利用しているので、つい軽視しがちですが、車両扱いとされる乗り物です。
しかし、最近では、スマホの普及をきっかけにわき見運転による死亡事故も報じられており、今後警察は取り締まりを強化していくと言われています。
神戸地裁では、当時11歳の少年が運転する自転車と衝突した高齢者が意識不明の寝たきり状態になった事故で、少年の母親は監督義務を果たしていなかったとして、9,500万円の損賠賠償を請求したのは記憶に新しい事件です。
まとめ
ホームヘルパーの自転車移動は、タイヤのパンク防止にこまめに空気を入れるなど、悪天候によって誘発される事故に対しても、警戒しなければいけません。
最近では、スマホによる「ながら運転」が問題視されており、自転車の不注意運転による死亡事故の裁判では、被疑者に有罪判決が下ったことが大きな話題となりました。
「田舎だしいいか」と、つい信号無視や十字路の左右確認などを怠ってはいないでしょうか?
こうした事故を対岸の火事と思わず、訪問先でよけいなトラブルを起こさないよう、注意が必要ですね。
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