これからホームヘルパーとして働こうとしている方の中には、家政婦との違いがイマイチ分かっていない方も多いのではないでしょうか。
ホームヘルパー業務は、よく家政婦扱いされたり、仕事内容が一緒と誤解されたりしますよね。
確かに、ご自宅へ伺って調理や掃除、買物代行などの家事代行全般を担う意味では、両者は共通点が多いです。
しかし、ヘルパーと家政婦には、目標や目的に明確な違いがあるのです。
ホームヘルパーと家政婦の役割の違い
ヘルパーの目的や目標は、ご利用者の日常生活動作(※以下、ADL)を向上させることです。
ADLとは、生活にかかわる「食事」「着替え」「排泄」などの動作すべてを含みます。
ヘルパーの役割は、ご利用者ごとにADLの”できること、できないこと”を把握して、ご自身のペースでその人らしい生活が送れるよう、サポートをすることです。
たとえば、ご利用者と一緒に洗濯物を畳んだり、入浴介助で身体をタオルで洗ったり、代行ではなく「できないことをサポート」することですね。
一方、家政婦は、お客様の要望に応じるのが役割です。要介護認定を受けていない方でも利用できます。
ホームヘルパーと家政婦の働き方の違い
ホームヘルパーと家政婦の働き方の違いは、様々な点で違いが見られます。
介護資格が必要かどうか
ホームヘルパーは、所属する訪問介護事業所と介護認定を受けたご利用者が、ケアマネージャー(※以下、ケアマネ)を介して契約を結んだ後、サービス提供責任者(※以下、サ責)によって計画された介護業務を行います。
要介護認定されたご利用者の「身体介助」「生活援助」それぞれのケアは、「介護職員初任者研修」「実務者研修」「介護福祉士」いずれかの資格をもつホームヘルパーでなければ、やってはいけない決まりとなっています。
(要支援認定されたご利用者に関しては、地方自治体管轄の「地域包括支援センター」を中心に、簡易研修を受講したヘルパーでもサポート可能)
一方、家政婦のお仕事は、働くにあたって必須となる資格はありません。
ただし、会社の方針によっては、お客様から要望があれば介護資格保有者である家政婦を派遣して、「身体介助」にあたる介護業務を引き受けることもあります。
これは、介護保険限度額を超えて介護を必要とするご利用者を対象とした、混合介護と呼ばれるスタイルです。
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ご利用者のご家族からの要望に応えられる
ホームヘルパーがケアをできる範囲は、ご利用者のみとするルールがあるため、たとえばご利用者のご家族分の食事まで作ることができません。他にも、ご利用者の利用しないスペースの掃除ができない等、細かい制約の中で働くのがホームヘルパーの特徴です。
一方、家政婦なら、契約内容に沿ってお客様の望むレベルまでサービスを提供することが可能です。
たとえば、ご親戚に急な不幸があり、急きょ介護が必要な高齢者を家に残して出かけなければならない場面など、迅速・柔軟に対応してもらえるのが、家政婦の大きなメリットでしょう。
ホームヘルパーと家政婦のサービスの違い
基本的に、家政婦にできない業務は決まっておらず、お客様の要望それぞれに価格設定をしてサービス提供をします。
たとえば、ヘルパーと家政婦の話題でよく上がるのが調理についてです。
ヘルパーは、事前に計画された調理しかできませんし、料理のプロとして訪問しているわけではないため、すべての要望に応えることはできません。
また、買い物代行についても、ヘルパーは生活必需品以外は買ってはいけない決まりがあるため、本当の意味でご利用者のケアが実現しずらいところがあります。
一方、家政婦なら、たとえば元飲食店勤務されていたプロの技術を持つ方にお願いをして、食べたい料理を提供することも可能です。
ペットを飼っているなら、お世話をすることも可能ですし、庭の草取りから大掃除まで、家政婦には、介護保険内サービスではできないことすべてに制限がかかりません。
ホームヘルパーには、できないことが数多くありますが、家政婦は基本的にサービスの提供は無限といえるでしょう。
ホームヘルパーと家政婦の給料の違い
本記事の執筆にあたり、筆者はポータル求人サイトとして有名な「インディード(Indeed)」で集計された、「ホームヘルパー」と「家政婦」求人条件をそれぞれ調べてみました。
両者を比較してみると、下表のようになります。
職種/項目 | 平均時給額(※) | 時給金額の範囲 | 平均就業時間(1件あたり) |
ホームヘルパー | 1,250円 | 2,200円~700円 | 30分~3時間 |
家政婦 | 1,184円 | 2,300円~700円 | 2~3時間 |
(※)インディードに掲載していない企業もあるので、あくまで参考程度に留めてください
両者にほぼ違いがないように見えますが、訪問先で働く時間については、家政婦求人の方が長い傾向にあるため、効率よく稼げる傾向にはあるでしょう。
ちなみに、平成28年度厚労省データによると、ホームヘルパーの平均時給額は1,449円とやや高額な数値が記載されていますね。
平成28年度厚労省データ:e-Stat 政府統計の総合窓口
訪問先までの移動時間に発生する時給は、別途計算される(または無給)ため、どれだけ近場の訪問先で働けるかによっても、効率よく稼げるかどうかが決まります。
訪問介護事業所は、ヘルパーから業務報告を受けて、国民健康保険団体連合会(※以下、国保連)へ8~9割、ご利用者へ1~2割の費用を請求します。
ホームヘルパーの給料は、ここから支払われるわけですね。
一方、家政婦はお客様から直接報酬を受け取り、仲介業者(登録会社)への手数料を支払った残りが取り分となる仕組みです。
ホームヘルパーにも資格手当など時給アップのチャンスはあるものの、介護保険内で給料が支払われるシステムである以上、限界があります。
しかし、家政婦なら、サービスの価値を高めることで、時給金額はある意味青天井に伸ばしていくことも可能です。
ホームヘルパーが家政婦扱いされる理由
介護のプロであるホームヘルパーが家政婦扱いされる原因として、男尊女卑の価値観が根強く残る団塊世代の、「介護は女こどもの仕事」である印象を抱いていることに起因しているのではないかと、筆者は感じています。
マスコミによる安易な報道による「低賃金」「介護殺人」「虐待」といったネガティブな印象を国民に与えたことで、ホームヘルパーの尊厳を奪ってしまったことも、間違いない事実でしょう。
ご利用者の中には、「税金を払っているんだからやってもらって当たり前」とした考えを持つ方も多く、”できないことをできるように”する介護の本質からどんどんかけ離れていくのも強く感じます。
家政婦扱いされることは、ご自身だけの問題ではなく、業界全体の問題としてとらえて、自分ひとりで解決しようとせず、サ責やケアマネ等全体を巻き込みながら、理解に向けて話し合っていくしか、道はありません。
家政婦扱いされて、予定にない援助やプロ並みの家事代行を頼まれそうになったら、「ゴメンなさい。介護保険内では、〇〇はできないんです」と、あくまでも介護保険制度の決まりがあるから、できないんだという伝え方をしてください。
ご利用者の不満やクレームは、あくまでも現行の介護保険制度の不備が原因であると理解しましょう。
まとめ
現状を踏まえると、単純な時給換算で比較すれば、サービス内容の対価として給料が支払われる家政婦の方が、努力次第で稼ぎやすいとは思います。
一方で、ホームヘルパーも正社員雇用でフルタイム常勤勤務でキャリアを積んで、サ責や事業所の管理者といったマネジメント側まで上り詰めることができれば、安定した高給待遇が見込めるでしょう。
つまるところ、ホームヘルパーと家政婦、どちらを選ぶべきかの問題は、
- 介護職員として働きたい➡ホームヘルパー
- サービス業として働きたい➡家政婦
この考え方で間違いありません。