最近の介護業界の動向として、要支援のご利用者は介護予防・日常生活支援総合事業として、政府は介護保険外サービスの推進をしていく姿勢を見せています。
介護保険サービスと、介護保険外サービスを合わせたサービスを、混合介護といいます。
これから、在宅介護で活躍するホームヘルパーの需要は、混合介護の発展によって、ますます伸びていくことは間違いありません。
これまで、「働きたくても、距離が遠くて非効率」「たった30分の介護サービスじゃ大して稼げない」といった、ホームヘルパー特有の働き方への悩みを、今後は解消できる可能性がたくさんあります。
介護保険外サービスとは
介護保険外サービスとは、その名の通り、ご利用者が1割自己負担(※所得額によっては2~3割)となる介護保険を使わず、全額自費で利用するスタイルです。
介護保険外サービスだけを使うご利用者は少なく、たいていの場合、介護保険サービス内では間に合わない部分を、保険外サービスでフォローしてもらうケースが一般的です。
このやり方を、混合介護といいます。
(ただし、介護保険でやり切れない部分を、延長してサービスを提供することはできず、ある程度の制約はあります)
介護保険サービスと保険外サービスの組合せに関する保険者等の運用実態調査について(厚労省資料):
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20180313/180313iryou02.pdf
介護保険外サービスは、障がいや介護を理由にサービスを利用するケースだけではないので、ペットシッターや旅行の同行援助など、さまざまな形態があるのですが、ここではヘルパー主婦の特性が生かしやすい「家事代行サービス」に焦点を絞って、お話を進めます。
家事代行サービスのメリットを、ホームヘルパーの目線から考察すると、以下の点が挙げられます。
- 高時給の求人が期待できる
- 資格のない未経験者でも働ける求人がある
- 介護保険サービスでは対応できない介護を実現できる
高時給の求人が期待できる
本記事の執筆にあたり、筆者はさまざまな家事代行サービスの求人条件を調べてみました。
ポータル求人サイトとして有名な「インディード(Indeed)」で集計された、「ホームヘルパー」と「家事・清掃代行スタッフ」の平均時給を比較すると、以下の結果となりました。
職種/項目 | 平均時給額(※) | 時給金額の範囲 | 平均就業時間(1件あたり) |
ホームヘルパー (介護保険サービス) |
1,250円 | 2,200円~700円 | 30分~3時間 |
家事・清掃代行スタッフ (介護保険”外”サービス) |
1,184円 | 2,300円~700円 | 2~3時間 |
(※)インディードに掲載していない企業もあるので、あくまで参考程度に留めてください
時給額だけをみてとると、ホームヘルパーがやや高いのですが、「家事・清掃代行スタッフ」は清掃のみの求人も入るため、平均時給額が低くなっています。
ポイント
家事代行サービスを展開する代表企業の採用基準をチェックすると、「CaSy(カジー)」は仙台を除く対象エリアでは最低時給1,450円スタートですし、近年テレビで話題となった”伝説の家政婦”志麻さんが在籍する「タスカジ」には、最高2,100円の高時給で働いているスタッフがいます。
つまり、家事代行サービスは資本力の高い大手企業に登録して働けば、稼ぎやすいということですね。
もうひとつの大切なポイントとして、1件あたりの就業時間に差があります。
ホームヘルパーの1件あたりの勤務時間は、ご利用者によっては30~45分など1時間に満たないケースもあるため、たくさん件数をこなしてもあまり稼げないデメリットがあります。
一方、家事代行サービスなら、最初は2~3時間(※延長は30分刻み)で契約するケースが多いので、より効率よく稼ぎやすいですよね。
介護資格のない未経験者でも働ける求人がある
ホームヘルパーとして、介護保険サービス業務に携わるには、原則介護職員初任者研修(※旧ホームヘルパー2級)を修了していなければいけません。
しかし、介護保険外サービスであれば、資格がなく未経験からでも、働ける求人があります。
ただ、介護保険外サービスでも、お客様にサービスを提供する以上、必要となるスキルや知識を身につけるための研修や資格取得を義務づけているところが多いです。
ポイント
介護保険外サービスとして近年注目されているのが、「あ・える倶楽部」と「NPO法人日本トラベルヘルパー協会」が提供する、車イス生活者などを対象とした旅行の同行サービスです。
お仕事として同行するには、ヘルパー協会の民間資格である「トラベルヘルパー2級」以上の取得が求められます。有資格者はすでに800人以上を超えており、今後は全国各地に進出するといわれています。
介護保険サービスでは対応できない介護を実現できる
ホームヘルパーとしてお仕事をしていると、
「家内の墓参りに行きたいけど、自分ひとりでは行けない」
「車でドライブをしたいけど、もう運転ができなくなってしまった」
「美容院にいきたいけど、移動手段がないから諦めている」
こういった、介護保険内ではサポートできない現実に、落胆してしまったご経験のある方も多いと思います。
介護保険外サービスであれば、制約はほぼなくなるので、心から喜んでくれるお客様の顔を見ることができるかもしれません。
「家事・清掃代行スタッフ」求人を掲載している企業まとめ
下表は、ポータル求人サイト「インディード」で、「家事・清掃代行スタッフ」に関連する求人数と平均時給額をまとめたデータです。
企業名 | 掲載求人数(※) | 平均時給額 |
ネオキャリア | 23,000件 | 1,436円 |
リクルートスタッフィング | 8,735件 | 1,211円 |
CaSy(カジー) | 4,278件 | 1,450円 |
テンダーラビングケアサービス | 3,194件 | 1,304円 |
アースサポート | 1,865件 | 1,297円 |
ダスキン | 1,381件 | 1,022円 |
(※)あくまでも「家事・清掃代行スタッフ」キーワードで検索したときの数値なので、関連性の低い求人も含まれています
該当する企業は他にもたくさんありましたが、ここでは求人数が1,000件以上のデータのみ、ピックアップしています。
文中で紹介したCaSy(カジー)はやはり、平均時給が高いため、チェックしておきたい企業ですね。
まとめ
本記事では、介護保険外サービスが今後推進されているにあたり、主婦ヘルパー層と相性が良い「家事代行サービス」について、取り上げました。
初任者研修を取得しているホームヘルパーも、資格なしでこれから働こうか検討している方も、これからは視野を広げて、介護保険外サービスを提供する企業で働けるかどうかを一度検討してみるべきです。
なぜなら、今後は市場が縮小傾向である介護保険サービスにこだわり続ける必要はないですし、保険外サービスは家事代行だけでなく、
- ご利用者と密なコミュニケーションがとれる「見守り」に特化したサービス
- 爪の手入れ、カラーなどを施すネイリスト
- 釣りの日帰り体験ツアー
など、これまでの介護業界の常識にとらわれない、新たな分野で働けるチャンスがたくさんあります。