介護業界の高い離職率は周知の事実ですが、これからホームヘルパーへ転職を検討されている方の中には、離職率を気にされている方も多いのではないでしょうか。
下表は、公益財団法人介護労働安定センターで平成28年10月から一年間集計した、訪問介護員と、それ以外の介護職員の離職データです。
正規職員 | 非正規職員 | |
訪問介護員 | 1,747人 (17.0%) | 3,356人 (13.8%) |
介護職員 | 7,618人 (14.3%) | 6,771人 (20.6%) |
離職率の平均が16.2%であり、非正規職員の割合が多い特徴からすると、介護業界の中ではホームヘルパーの離職率は低めであるといえますね。
しかし、だからといって、本当にホームヘルパーとして続けていけるのか、不安を感じる方も多いと思います。
そこで、ここでは、当サイトでホームヘルパー経験のある方々からヒアリングした内容をもとに、ツライことや大変だったことをまとめたものをシェアします。
ご参考になれば幸いです。
調理支援の難易度は高い
訪問介護の調理支援は、老人ホームのように専用調理師がいないので、冷蔵庫の中身を見て、ご利用者の好みや、偏食の度合いを考慮しつつ、限られた時間内で品数多く作る業務を一人で担います。
とくに男性ヘルパーで調理が苦手な場合、ご利用者から「おいしくない」とストレートに言われたり、食べてくれないこともあります。
調理が下手なことを理由に、ご利用者からヘルパーの交代を希望されることもあるので、ショックを受ける方も多いです。
一人で責任を負うツラさ
「一人で責任」というと大げさですが、訪問先ではほぼ一人でケアをするわけですから、施設とは違い、自分でご利用者の命をお預かりする覚悟・スキルは必要とされます。
訪問先の到着時間は(当然ですが)厳守ですので、つねに時間に追われる毎日です。
現場では何が起こるか分からないですから、予期せぬトラブルによってプラン通りにケアができずに、次の訪問先へ移動するために切り上げないといけないケースもあって、対応がとても難しいです。
メモ
予期せぬトラブルとは、たとえば、ご利用者宅がゴミ屋敷と化していたり、多頭飼育崩壊(※未去勢のペットが繁殖を繰り返して増殖した状態)した自宅だったときなどです。
掃除業者レベルの状況であっても、ケアマネやサ責から指示があれば、やるしかありません。
動物の糞尿や死骸のニオイはなかなかとれず、ツライものがあります。
また、訪問介護の夜勤を担当する場合、ご利用者の容態が急変したら、冷静で迅速な対応を求められます。
施設のようにすぐそばに介護スタッフがいないので、プレッシャーはかなりのものです。
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訪問介護の夜勤について
ホームヘルパー(訪問介護員)として働きたいけど、もっと収入が欲しい、あるいは、夜勤専従(※夜間のお仕事のみ行う人)を希望する方もいると思います。 何となく、主婦パートさんを中心に日中活動しているイメー ...
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どんなに忙しく、時間に追われていても、つねにご利用者を観察しつつ状態の把握は必須ですし、疾患のある方はとくに注意が必要です。
訪問先への移動は大変!
基本的に、訪問介護は雨風台風・雪など、どんなに悪天候であっても、車や自転車で向かわなければなりません。
車や自転車移動などは、長距離移動で座りっぱなしだと、腰やお尻が痛くなることもありますし、交通事故のリスクがあるので、緊張感により疲労が溜まることもあります。
生活スタイルの把握がムズカシイ
施設介護と訪問介護のもっとも大きな違いは、施設は介護スタッフ主導でケアをしますが、訪問はご利用者が主導になってケアを提供するところです。
ご利用者はほぼご高齢なので、長年染みついた生活習慣やこだわりを持ってらっしゃいますから、ヘルパーのプロとして把握していく必要があります。
こう聞くと、大変さが伝わらないかもしれませんが、ご利用者の中には認知症の進んだ方もいるので、意思の疎通がうまくいかないことが引き金となり、「もの盗られ妄想」など暴力的になるケースもあるので、一筋縄ではいきません。
掃除や食事など、つねにご利用者の指示や要望を聞きながら動くので、最初はギクシャクして疲れてしまうこともあります。
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ホームヘルパー(訪問介護員)の仕事内容について
在宅や有料老人ホームで暮らすご利用者の自立支援を担うホームヘルパー(訪問介護員)は、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)に在籍する働き方が主流です。 訪問介護事業所を運営する法人は、社会福祉法人・医 ...
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どちらかというと、一家の主である男性の方が、家の中では態度がキツくなることが多い傾向にありますね。
たとえば、デイサービスではとても温厚な性格なのに、家では、「ここができていない」「ちゃんと介護してくれ」など、当たりがキツくなったりします。
物の置き場所ひとつとっても、少しでも動かしたら元の場所に戻さないといけなかったり、部屋が散らかっていてもこちらの都合で勝手に片付けることができないのがツライところですね。
真夏の訪問介護で、ご利用者は暑くないからとクーラーなしでケアを強いられるケースもあります…。
「ご利用者第一」なのは当然とはいえ、訪問先の環境に耐えきれず、事業所に訴えるヘルパーも珍しくありません。
ご利用者とご家族の板挟みがシンドイ
ホームヘルパーが、ご利用者とそのご家族の板挟みになってしまうケースがあります。
たとえば、糖尿病のご利用者なのに、甘いモノ好きでお菓子がやめられない、でも、ご家族は「食べさせるな」と言われてしまうと、どちらに従うのが正解かは、ヘルパーにはわかりません。
他ヘルパーと比較されるのはキツイ
訪問介護の業務範囲は、あいまいな部分がとても多いため、ご利用者より「私の友達が利用しているヘルパーは○○してくれた」「他のヘルパーさんは○○までしてくれて助かった」など、ケアプラン外のお願いをされたとき、どんなに丁重にお断りをしても「おたくはしてくれないのね」などとイヤミを言われることがあります。
男性ヘルパーなどは、「庭にある松の木の枝を剪定(せんてい)してくれ」「家の外壁塗装を手伝ってくれ」などと依頼されることもあります。
ハッキリお断りしてしまうと、他の事業所に切り替えられてしまうとお仕事を失う恐れがあるため、対応に困るヘルパーは非常に多いです。
まとめ
現役ホームヘルパーが、大変だったことやツライことを、まとめました。
筆者自身は介護職の経験はありませんが、転職で大切なポイントは最低の事態を想定しておくことだと思っています。
最低の事態を想定して転職すれば、予想よりもお仕事がラクに感じられることもあるためです。
ホームヘルパーに転職して無理なく続けるためには、適性があるかどうか、希望条件に合う求人を探せるかどうかなど、さまざまな要素が絡んできますので、焦らず納得のいくまで情報収集を続けていきましょう。