訪問介護で働くパートや登録ヘルパーが、訪問介護のお仕事に対する不満のひとつに、シフトの組み方があります。
シフトの組み方が悪いと、
- 勤務を希望している曜日や時間外にシフトを入れられる
- 訪問するまでの空き時間が長く、拘束されてしまう
- 仕事が少なすぎてまったく家計の足しにならない
などの問題が起こり、退職の道を選ばざるとえなくなります。
そもそも、パートや登録ヘルパーなら、希望した曜日や時間の中で自由に働ける!って期待しますよね。でも、事業所によっては自分の希望がシフトに反映されない問題が現実にあるのです。
ここでは、これから訪問介護ヘルパーとして働きたい方や、現在ヘルパーとして働いていて抱える悩みや不満、不安なことについて、取り上げています。
勤務を希望している曜日や時間外にシフトを入れられる
訪問介護事業所のシフトを組むのは、おもにサービス提供責任者(※以下、サ責)です。
サービス提供責任者(サ責)とは?
サ責は、ご利用者様、そのご家族を含めて、ご意向に沿った介護サービスの提供がなされているかどうか、マネジメントをする役割を担っています。
サ責は、まずご利用者様の都合ありきでシフトを組みますから、職員全員から提出される休みなどの希望を、すべてを聞くわけにはいかなくなります。
人手不足の事業所では、サ責以下社員にはかなり無理をさせているところもあります。
当然、登録ヘルパーやパートにもシワ寄せがくるため、希望に合わないシフトが完成するわけですね。
とくに、主婦層の多い登録ヘルパーは、「平日の日中のみ」希望する方が多いので、ご利用者様の希望が多い夕方や夜間のシフト人員が手薄になる傾向があります。
希望条件に合わないシフトを組まれたら、毅然と断りましょう。
あいまいに濁して引き受けてしまうと、この人は入れても大丈夫なんだなと思われてしまい、さらに無理を重ねざるを得なくなります。
訪問するまでの空き時間が長く、稼げない
登録ヘルパーの時給は、一見すると賃金の低い介護業界の中ではそれなりに高額ですよね。
コンビニバイトよりも多少高いほどですから、働ける時間に制限のある主婦層は大きな魅力を感じて、この仕事に就く人も多いです。
しかし実際には、手元に残る給与はとても少額であることが多いのです。
なぜなら、複数のご利用者様宅に訪問する場合、訪問先から次の訪問先まで長距離であっても、(ほぼ)無給として扱われるケースが多いためです。
もちろん、交通費手当などで移動時間も給料が出る事業所もありますが、残念ながら、契約の時給額が適用されるのは訪問先で実施する介護サービスの時間のみです。
よって、移動時間が長いほど、登録ヘルパーは損をします。
注意
移動時間に対する報酬の現実は、訪問一軒の移動につきせいぜい100~200円がいいところです。
たとえば、
- 時給:1,200円
- 移動手当:100円
- (※移動・介護すべてを含めた)拘束時間:2時間
であれば、実際の時給額は「1,300 ÷ 2時間 = 650円」とほぼ半分の稼ぎになってしまうのです。しかも、訪問先で働く時間が「30分」や「45分」に設定されていることもあるので、さらに稼ぎが低くなる可能性もあります。
これなら、コンビニでバイトをした方がマシかもしれませんね。
「では、もっと訪問件数を増やせばよいのでは?」と思うでしょうが、前述したように、主婦層の働く時間帯は限られているので、自分の働ける時間に必ずしもシフトに入れる保証がないんですね。
これが社員なら、書類仕事や研修・ご利用者様の情報共有など、やることはたくさんあるでしょうが、パートや登録ヘルパーではそうもいきません。
移動手段が車ではなく、スクーターや自転車などの場合は、どこで時間をつぶすかの問題も出てきます。
真夏や真冬に、熱中症になったり、寒さで体調を崩してしまっては、本末転倒ですよね。
車であれば、たとえば天候が悪くても、どこかに停めて待機もできますし、食事をとることも可能ですが、スクーターや自転車であれば、喫茶店などでやり過ごす必要があります。
自宅と訪問先の距離間をみて、自宅に帰れるのであれば、上記の問題はある程度クリアできますが、それでも空き時間の長い登録ヘルパーの働き方が非効率であることに変わりありません。
「希望通りシフトに入れない」「移動距離が長く、非効率」である場合、事業所を変えるか、掛け持ちをして働くかの対処しか方法はないでしょう。
違法な拘束行為、シフト変更は毅然とお断りしましょう!
シフトを組むサ責によっては、ありえないような話も多々あります。
例を挙げるなら
- 職員に社用の携帯を持たせて、勤務終了後も利用者様の対応をさせる
- 前日に突然シフトを変えられる
- ヘルパーの技量に見合わないシフトを組まれる
などです。
職員に社用の携帯を持たせて24時間対応!?
職員に社用の携帯を持たせること自体は、とくに問題ではありません。社員であれば、細かい事務連絡や日程調整などで必要ですし、パートや登録ヘルパーであっても、利用者様の都合による変更など、さまざまな情報共有が必要になります。
勤務時間中に、携帯を社員に持たせている事業所は、パートや登録ヘルパーにとっても安心感があります。ですが、それが勤務時間以外であれば話は変わってきますよね。
たとえ事務所は24時間体制であろうと、むしろ事務所が18時などでしまる場合はなおさらに、携帯は事務所に置いてくるべきですし、それ以降の緊急の連絡は責任者か施設長などに入るべきであって、決して従業員に入るべきではありません。社用携帯から個人の携帯に転送される施設もまれにあるようですが、本来ありえないことです。
そんなことがあればヘルパーの気が休まらないし、もし連絡があれば夜間の対応もしなければならなくなるため、体調不良にもなります
体調を崩せば、万全の状態で介護をすることができず、重大な事故につながるリスクも高まります。
訪問介護は、施設勤務と違いつねに一対一でケアをする性質上、体調不良を理由にミスや事故を起こすなど許されません。
前日に突然シフトを変える事業所に要注意
一か月単位、まれに一週間単位で出るシフトを、前日になって急に新たな訪問先を入れられる、これもあってはならないことです。
もちろん、入る予定だったヘルパーの急病や、利用者様のご都合による急な利用など、緊急で変更を余儀なくされることはいつだって起こりえます。
しかし、その時間空いているヘルパーがいるからと事務所が受けてしまう場合は、話が違ってきます。
利用者様と一対一で向き合う訪問介護では、情報の共有がもっとも大事です。
ご利用者様はどんな性格でなにを好まれるのか?なぜ訪問介護を利用されるのか?どんなご病気をお持ちなのか?ご自宅はどこにあるのか?知らなくてはならない情報はたくさんあります。
緊急でもないのに前日にシフトに組まれたりすれば、大事な情報を知る時間がありません。
訪問介護は、信頼と信用を大切にしなくては成り立たない仕事なのです。
ヘルパーには技量がある
介護にはプロフェッショナルな技術が必要です。しかし、中にはそれを分かっていない事業所もあります。
新人ヘルパーに、資格があるからと難しい仕事を割り振ったり、生活介護しかしたことがないのに、資格がとれたからと突然身体介護を割り振ったり…資格がとれたら、突然介護技術が身についたら、誰も苦労しませんよね。
資格を取っていくら知識を詰め込んでも、ご利用者様への接し方・好む介護の仕方・必要な介護は、一人一人違うものですから、できないことはたくさんあります。
サ責をふくめ事業所の経営陣は、現場のヘルパーが好き嫌いで利用者様を選ぶのではなく、自分の技量に見合わず、ご迷惑をかけてしまうかもしれないからできませんというならば、きちんと聞いて受け止めなければなりません。
無理にシフトに組み込み、自信のないヘルパーを派遣してしまえば、ミスや事故につながりかねないからです。
登録ヘルパーが訪問先からキャンセルされた場合の賃金はどうなる?
訪問介護サービスを申し込むご利用者様は、認知症や緊急入院、死去されたなど、さまざまな理由で訪問予定がキャンセルになることがあります。
時間給や月給で働く常勤ヘルパーは別として、限られた時間のみ働く登録ヘルパーの取り扱いが気になるところですよね。
色々なサイト口コミを調べてみると、キャンセル時の対応は事業所によってさまざまです。
- 訪問後、10~30分待機してもご利用者様が現れず、キャンセルになった場合は休業手当が支払われる
- 訪問前にキャンセル連絡が入った場合、休業手当は支払われず、無給扱いとなる。
- 代替の仕事をシフトに組み込む
訪問先のご利用者様が留守で当日キャンセルの場合
訪問後、登録ヘルパーが10~30分待機するというのは、ご利用者様が訪問日であることを忘れていたなど、何らかの理由でサービスを提供できなかったケースです。
事業所によって、待機時間の違いはありますが、ご利用者様不在の確認ができた場合は、休業手当として賃金や交通費が支払われるのが一般的です。
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
(出来高払制の保障給)http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049#112
休業手当は、労働基準法によって「平均賃金の60%以上を補償すべき」というルールがあります。
登録ヘルパーは休業手当がなく無給扱い!?
以下は、休業手当への見解について、社会保険労務士サイトから引用しています。
社会保険労務士とは?
社会保険労務士は、労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成代行等を行い、また企業を経営して行く上での労務管理や社会保険に関する相談・指導を行う事を職業とする為の国家資格であり、弁護士・弁理士・司法書士・税理士・行政書士・土地家屋調査士・海事代理士と共に職務上請求権が認められている8士業の一つである。
引用元:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%99%BA%E5%8A%B4%E5%8B%99%E5%A3%AB
労基署の調査でも、代替え業務を提案したが、どうしてもヘルパーさんの勤務可能日と合わなかったり、利用者との兼ね合いで見つける事ができなかった場合など、努力した形跡が認められる場合には休業手当の支払いまでは指摘されないケースも過去にはございます。(あくまで事例です。支払い免除を保証するものではございません。)
引用元:
http://sr-fukushi.com/article/14033926.html「キャンセル」が発生した場合、その職員に対して休暇を命じ、賃金を支払わないケースがありますが、その時の対応の仕方によっては「休業手当」を支払う義務が生じます。
結局のところ、キャンセルがあっても事業所が雇用主として代替えとなる仕事を割り振る「努力」が見られれば、休業手当を払う義務から逃れられると記載されています。
つまり、登録ヘルパーは前述した当日の無断キャンセルならともかく、連絡があったうえでの事前キャンセルに関しては、休業手当がもらえる可能性は低いです。
登録ヘルパーは、フリーランスのように好きなタイミングで働ける自由がある分、キャンセルが続けば収入が安定しないリスクを抱えているのは間違いありません。
まとめ
シフトを組むサ責には、ヘルパーの技量を見極めた上で、適切に派遣するためのシフトを組むスキルが求められます。
パートや登録ヘルパーとして働く場合、自分の希望に合った訪問先をシフトに入れてもらえない場合、掛け持ちをして働くか、事業所を移ることを検討する他ないでしょう。