訪問介護サービスにおける調理支援は、家事代行とは異なり、ご利用者様の自立支援が大前提ですので、調理の全工程をヘルパーが代行することは、本来の目的からすると間違っています。
こう聞くと、「ヘルパーが全部やっちゃうのはダメだったの?」と思われる方は多いかも知れません。
味見をしてもらうべきかどうかなどを迷うヘルパーさんもいるようですが、もちろん味はご利用者様が決めるべき工程でしょう。
では、どのように働きかければ、ご利用者様も一緒に調理をしてくれるでしょうか?具体的な例を挙げながら、紹介していきます。
ご利用者様にも自覚してもらう
まず、ご利用者様と一緒に調理をする意識をヘルパーが持つことです。
やって差し上げるのではなくご利用者様が調理をする、その補助なのだという意識を持つことが大事です。
うまく調理支援をしていくためには、契約の時にケアマネさんやサービス提供責任者の方から、ご利用者様に自立支援であることをよく説明をして、ご本人に理解していただく必要があります。
ご本人が「なんでやってくれないの」という不満をもったり、一緒に調理をしてくれず支援がうまくいかないという事態にならないように、事前のすり合わせはとても大事です。
調理に取り組んでもらうために作れないフリをする
もし、なかなか一緒に調理に取り組んでいただけないようなご利用者様だったら、まずメニューは必ずご自身に考えてもらいましょう。
メニューを決める時に、ご利用者様がよく作られていたものを引き出せるともっといいですね。
そして、ご利用者様が考えたメニューを、ヘルパーさんは作れないフリをします。
すると、ご利用者様はたいがい「しょうがないわね、教えてあげるわよ」となります。そうなればしめたものです。
利用者さんができそうな調理の工程
「しょうがないわね」とならなかったご利用者様でも、もう一度ヘルパーは自立支援のために入っていますからとご説明し、一緒にやりましょうとお誘いします。
これから、いくつかご利用者様ができそうなカンタン工程の例を上げます。
きのこを割く
きのこを割くだけなら、認知症の進んだご利用者様や、車椅子の方でもできる作業ですよね。
口でご説明してもピンとこない方でも、目の前でやって見せれば、できる方は多いですよ。
きのこの種類は、「舞茸」「えのき茸」「しめじ」などがよいでしょう。
大根をおろす
大根をおろす作業は、おろし金の下に受け皿が付いたものでしたらより作業がやりやすいです。
包丁が使えるご利用者様であれば、桂剥きもお願いしましょう。
お米をとぐ
合数を一緒に計ったり、水を入れてもらったりする作業も一緒にできそうですね。
お米をとぐ行為を言葉で理解できないご利用者様でも、目の前で一度やってみせると良いでしょう。
炒める
菜箸や木べらを使って、フライパンやお鍋で野菜などを炒めるのは、ワリと簡単です。
そのとき、火を扱うので十分気をつけて見守る必要があります。
混ぜる
調味料をあらかじめ混ぜておく、サラダの味付けにドレッシングを混ぜる作業も簡単ですので、お願いしてみましょう。
そのとき、どんな味付けがいいか聞くことも大事です。
魚を焼き網に置く
とてもシンプルですが、焼き魚もちゃんとした一品料理です。
これができれば、ご利用者様はお一人でも焼き魚を食べることができますよね。
配膳・盛り付け
ご飯をよそう、おかずを盛り付ける作業も一緒にできそうですね。
一流店のような綺麗な見た目にする必要はもちろんなく、ご本人に「自分で出来た!」と思っていただければ大成功です。
まとめ
ご利用者様と一緒にやると言っても、どうすればいいのか戸惑ってしまう方もいるかもしれません。
日々のアセスメントから、ご利用者様が今できることは何かを想像してケアにあたると、コツが掴めてくるでしょう。
いつも、ご利用者様が一人の時でも調理ができたらどんなに嬉しいか、助かるか想像しながら支援を考えていくと、ケアの幅が広がるのではないでしょうか。